「僕、ウォンバットと旅に出る。」ライナーノーツその4〜唄について〜

アルバムジャケットからコンセプトが決まり、レコーディングが始まりました。
収録した曲たちはそれぞれこんな想いから生まれました。
そして、その思いはどこかの路上につながっているのです。

「おとこのこおんなのこ」

いつだって、何かを始める時にはただ夢中で駆け出すものです。それは大人も子供もいっしょ。
でもそんな駆け出す姿を笑う奴らもいるのです。ほんとは分かっているけれど、ついついからかってしまうのかもしれない。確かに夢中で駆け出したことには、勘違いがあったり、間違ったやり方があるかもしれない。
僕も昔々、エレキギターがまだ弾けない頃、マイクをアンプに繋いでひずませて、ギターソロを口でやってたこともある。笑われても仕方がない。でも、きっとそんな姿を「それ、おもしろいね!」と言ってくれる本当の友達がいるはずです。少なくても僕にはそんな友達がいました。からかったりしないで、一緒に唄ってくれる友達が。

男の子が女の子みたいでもいいし、女の子が男の子みたいに遊んだっていいじゃない。大人だって子供だっていいんだ。そんな思いを唄にしました。

 

「ひまわり畑」

今回、新曲を多く書いたのですが、アルバムには古くからの曲も半分入れました。
「ファンタジー」をコンセプトにした時、物語を強く打ち出した唄たちをもう一度、きちんと吹き込みたいと思ったのです。しかも、この歌を大切にもってくれている友達がいたからです。2018年京都のライブをお休みした時の夏、友達がそろってこの歌をチャット越しに唄ってくれたのです。自分の歌を誰かが覚えていてくれることほど嬉しいことはありません。だから、待っていてくれたことへのお礼を込めて新たに吹き込みました。
この曲を書いた当初のイメージで頭の中にあった音のパーツを一つ一つ再現してみました。

 

「イワナの居場所」

今回のアルバムのコンセプトの一つに「旅に出る」があります。この曲も「山登り」という旅に出ます。人生において「嫌なものをなんでも食べてくれる伝説の魚」がもしもいたとしたら、多くの人がザックにいらないものをたくさん詰め込んで山にゆくでしょう。
その魚の名を「イワナ」としました。
「釣りキチ三平」で魚心さんが「イワナは伝説の魚だ!」と言っていたからです。言っていたと思う……。もしかしたら、私の記憶違いかもしれませんが、個人的にイワナは幻の魚なんです。
一度、とある山の途中の清流でパクパク口を開けているイワナに会ったことがありますが、とんでもなく低い水温の川で悠々と彼らは生きています。
本当に何を食べているんだろう。
なんであんなに冷たい水の中で笑っているんだろう。
どうして、人が来ると顔を出しに来るんだろう。
やっぱり幻の魚なんだ。

山に棲む浄化のシンボルとしました。
さて!イワナは見つかるのかな?それとも……。

 

「朝が来るまで」

今回のアルバムが完成に至る重要なきっかけ、「グラスを置く」ことをテーマにしました。大切な言葉を霧の中に失わないように、夜が更けることを恐れずに、たとえ朝が目前に迫ってもそのままじっと耳を澄ますのです。誰も待っていないかもしれないし、誰も来ないかもしれない場所でも間違いなく自分の場所なのだから、じっと時が来るのを待てばいいのだと自分に言い聞かせる唄です。

  

「エスカレータ」「かけっこ」

今回の大きなテーマとしてストリートライブに駆けずり回っていた頃の思いを「思い出」ではなく、生きる記憶として未来に続く糧にすることがありました。
とても個人的なことなのだけれど、一度はきちんとしたかったのです。もう何度も録音しているのだけれど、これでようやく一つの区切りです。納得の音楽ができました。
ノスタルジーではなく、現在からはっきり見える視点での歌として希望の詩にしました。「エスカレータ」を書いた当時は、ストリートで転がる僕らが遠ざかり、なんだか虚しさや悲しさが先行していたのですが、あれから僕たちはこの足で歩き、汚れた手のひらでも誇らしく挙げて生きてきました。認めてもいいのだと思います。あの時も、これまでも、そして今も「力いっぱい歩いている」のだと。「自動階段に身を任せているのではない」と。忘れてはいけない光景をこれからも唄いたいのです。
そして、「かけっこ」はその歩みからの「帰り道」。悔しさ、やりきれない熱さ、堂々巡りの苛立ちがまぜこぜになった時も、風に吹かれて自然と足が家に向かうのです。そしていつか、時が経てば忘れちゃうこともあるかもしれない。闇雲にかけてゆくのだから。でもそんな時にも、あの時の唄は忘れない。あの時に一緒に口ずさんだ音楽を忘れたりしないのです。力いっぱい走った僕らは、ぐっすり眠ってまた、明日に駆け出すのです。また君に会いにゆくのです。風が強い日はなかなか外に出れないけれど、そんな風の中にも歌はちゃんと紛れて聴こえてくるのです。

  

「僕、ウォンバットと旅に出る」

ウォンバットってとても珍しいところがある動物です。とても気になる奴なのです。外敵が近づくと掘っておいた穴に逃げるのですが、その時、お尻を外に向けています。そのお尻がとてつもなく固いのです。ちょっとやそっとでは歯が立たない。そして相手が諦めるまでじっとしている。自分なりやり方を突き通すのです。でも、あまりしつこい相手だと、その固いお尻で相手の鼻先を穴の壁に押し付けてバキバキにしてしまいます。きついお仕置きをするのです。戦わない意思を表明して、それでも絡んでくるやつはコテンパンにするのです。でも基本的に争いを好みません。だから、テレトリーを大切にするんだそうです。うんちをして、自分の縄張りを主張するらしいのですが、そのためにうんちが転がりにくいように四角いうんちをします。まるでサイコロのような。どうやってするんだろう?そこまでして、争わない環境を作るのです。なんてオリジナルややり方なんでしょう。憧れてしまいます。
そんなウォンバット。一律的に「逃げちゃダメだ!」ではなく、なんとも柔軟に、しなやかに「生きる、生き抜くこと」を選び、突き進むのです。そんな仲間と旅に出たらと夢に描いて唄にしました。
ウォンバットは苦い思い出を抱えています。たくさんの仲間たちが失われて(絶滅して)しまいました。みんなとってもオリジナルな生き方をしていた奴らです。
人間たちをみてウォンバットは伝えたいことがあるかもしれません。失った仲間のことを責めるのではなく、「人間も気をつけなければいけないよ!」と。だから、あんなに人懐っこいのかもしれません。こちらがびっくりするぐらい嬉しそうな顔をして駆け寄ってくるのです。
そしてはっきりと言うのです「逃げ出せ!まずは心守るために!」と。

  
ずいぶん長々と書いてしまいました。
読んでくれてありがとう。このアルバムを気に入ってくれたら嬉しいです。
次回はレコーディングの機材のお話をしようかなー。

 
アルバム「僕、ウォンバットと旅に出る。」の詳細はこちら!


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