今回のアルバム制作についてtessyに色々とインタビューしてみました!
(インタビュアー 雨谷榮太郎/studio dog-fight)
今回のアルバムについて教えてください。
コロナ禍に入る前にアルバム「僕、ウォンバットと旅に出る」をリリースしたのですが(現在はライブでのCD販売のみ)、オンラインでの活動が主となり、歌うこと自体が少なくなっていました。その間、ポータブルシンセによるアウトドアジャミングに魅力を感じてから、lo-fi beatsなど今までと違った方向性の音楽に傾倒していきました。そうするうちに、不思議なのですがアルバム「僕、ウォンバットと旅に出る」の中の物語が自分の中で膨らんでくることを感じてきたんです。ギターだけで歌ってきた時と違う感覚で。そして、次々生まれるストーリーを歌にしてオンラインでのリリースをぽつぽつとしていきました。
「僕ら冒険島」「ツキヨのウタ」や「メジロの憂鬱」ですね。
そうです。「冒険少年少女音楽シリーズ」と題して今までにないリズムや物語にワクワクしてきました。そして、音楽的にもlo-fibeatsでサンプラーや打ち込みを始めていたので、次の変化が訪れました。「夕立雲」に大きく影響が出てきています。
「夕立雲」は歌物では唯一、bandcampでの先行リリースがありましたが、どうしてですか?
bandcampでは主にlo-fiモノやアンビエントのインストだけアップしていたので、このラインナップの中に日本語の歌ものが入っていたら、海外の人はどんな反応をするかな?と試してみたかったからです。意外とすんなり受け入れてくれる方が多く、自信につながりました。今回のアルバムではリマスタリングしたバージョンで収録しています。
全体の音的にも変化を感じますがどうしてでしょう?
おそらく、DAWの影響もあるかと思います。前回のアルバムではLogic ProXがメインのDAWでしたが、インストを作るようになってからAbleton LiveがメインのDAWになっています。ご存知の通り、Liveはトラックも含めてタイムラインすべてをリンクして全体がシンセのように扱うこともできる、「楽器としてのDAW感」が強いです。Logicもそうした点に注力されてLive的なループモードが導入されましたが、やはりLiveの使いやすさには敵わないかなと感じています。曲のアイディアを直感的に広げるのにはとても有効ですよね。とはいえ、シンプルな歌物に関してはLogicのミキサーは慣れもあって使いやすいとも感じますので、現在は曲に合わせて併用しています。今回のアルバムではほぼ半分ずつです。
サウンド的にこだわりはありますか。
やはりギターの音にはこだわって収録しました。エレキに関してはほぼすべてアンプから出してマイク録りしています。テレキャスとES-339の2本を曲によって使い分けていますが、マイクはどちらにも同じコンデンサータイプのものをアンプから2cmほどの距離にスピーカーのセンターから3cmほど外して収録しています。私の場合、アンプのボリュームはかなり低めです。大きい音が苦手なので……。ですから曲によっては339をピッキングする生音が少し入っています。そのぐらいのボリュームです。
アンプから出した音を収録する意味はなんですか。
よく言われていることですが、DAWのギター・シュミレーターは触り出すとキリがない感じがあります。アンプならジャーンと弾いて、曲に合ってるなと思えればすぐに演奏に取り掛かれます。トーンや歪みも使い慣れたつまみで操作できますし。私の場合、ギターを弾いているときのマウス操作は、ものすごく厄介に感じるというのもあります。あとミックスの時にきちんと空気感が出るのでコンプのかかりが気持ちいいと感じますね。実はそのためにアンプの音は小さめにしています。そのほうが全体の空気感が収録できる様に感じるので。
アコーステックギターに関してはいかがですか。
いつものギブソン ・サザンジャンボとmiyako氏にいただいたk.yairiのコンパクトなギターをそれぞれマイク収録しました。マイキングに関しては、それこそ全部変えているのでブリッジ側だったり、ネックポジションだったりと色々です。サザンジャンボに関しては胴鳴りが大きいのでネック側から20フレットあたりを狙うことが多かったです。マイキング時に欲しい音を作っておくほうがミックスもより良いものになりますからね。
マイクプリやコンプのかけ録りはどうでしたか?
前回のアルバムではチューブマイクプリとコンプでかけ録りしたのですが、今回はTASCAMのオーディオインターフェイスがとても素直な音で取れますし、UAのプラグインコンプがとても良い音なので96Khz録音にして、DAWのなかで空気感をコントロールしました。ギターアンプと違って、マイクプリやコンプは一人で収録する際は弾いたり歌いながらの調整が難しいというのもあります。その分、演奏や歌には集中できたので良かったと思います。
ベースはどの様にして収録したのですか。
以前から使っているパッシブのDIからTASCAMに入れて収録しています。何曲かはmidiで打ち込んでIKMultimediaのMODOBASS2で鳴らしています。これがとても良い感じのプレベがあるのでこちらに差し替えた曲もあるぐらいです。他にもlogicProとLIVEに標準で入っていたベース音源も利用しています。
今回はピアノをはじめとする鍵盤楽器も多く聞こえますが、こちらのどの様に収録していますか。
ピアニカとハーモニカはいつも通り、生音での収録です。ピアノに関してはARTURIAのMinilab3での打ち込みが多かったです。このコントローラーは低価格ですが各DAWとの連携がスムースで素晴らしい操作性です。他にも「夕立雲」などではNovationのLaunchpad Pro Mkで弾いています。スケールを設定して、思うがままにメロディーやコードを弾くことができるので、これもととても楽しい「楽器」だと感じています。
DAWはableton LIVEとlogic proを併用したとのことですが、マシンは何を使いましたか。
当初はM1を載せたmac miniで制作を開始しました。このM1がまさに当たりのコアだと思うのですが、ストレスがまったくない素晴らしい処理能力だったんですよ。しかも、かなりのトラックを重ねても冷却ファンが回らない。ものすごく静かな環境で音楽が作れるのです。これってすごいことだと思うんですね。制作を進める中で、一度もファンが回ったことがないと思います。それでふと思ったんです。これM1を載せたMacbookAirが最強なんじゃないかと。(笑)Macbookなら持ち運びもできますし、ベッドルームでも浴室でも好きなところでレコーディングできるじゃないですか。それで、すぐに注文してアルバムの曲の大半はMacbookAirでの制作となりました。これは大きなターニングポイントになりました。制作のペースも上がりましたし、階段でギターを弾いて反響を収録するなど実験的なことがたくさんできる様になりました。
ノートパソコンで楽曲制作が完結する様になり、収録場所にも拘束されずに自由な音作りができる様になったのですね。本日はありがとうございました!最後に一言お願いします。
ものすごく時間がかかってしまいましたが、とても良い音楽が生まれたと自負しています。ぜひ、この物語たちを楽しんでもらえればと思います。ありがとうございました!